水土里ネット那須野ヶ原とは?
水土里ネット那須野ヶ原とは?
水土里ネットとは正式名称を「土地改良区」という農家の組織で(全国に約6000組織)、農地の整備や農業水路の維持管理を行っているほか、住民の方と連携した地域づくりや地域農業の振興のための活動を行っています。
水土里ネット那須野ヶ原の役割と変遷・将来的課題と先進的取組
組織の名にも冠されるこの那須野ヶ原とは、栃木県北部に位置し二つの川に区切られた広大な複合扇状地です。
その歴史や特性については別項のとおりですが、極めて水に乏しい地域であったこの地に、先人たちの際限なき苦労と努力によって完成した那須野ヶ原用水が、現在では健全化した水環境を確立し、美田溢れる豊かな田園空間を作り上げました。
「水を求め、水を大切にする」ことから始まり、今現在の豊かな那須野ヶ原のいわば屋台骨とも呼べる那須野ヶ原用水を適正に維持管理し、粒々辛苦の歴史を持つ豊饒なこの広袤を、未来永劫継承していくとともに、水や環境保全に対する意識を啓発し、農村と都市・人間と自然の共生を図り、地域の皆様とともにこの那須野ヶ原の未来を創っていくことが私どもの役割と考えています。
設立の背景として、那須野ヶ原では昭和42年に10の土地改良区が参画し国営事業が着工されました。地域農業の発展に期することを目的として、それぞれの土地改良区の利害調整と、事業によって造成整備された土地改良施設の管理を適正に行い、水の有効利用を図るために那須野ヶ原土地改良区連合が組織され、設立認可されました。その後、国営事業の完了に伴い、連合が土地改良施設の管理委託を受け、施設管理や水の管理にあたっています。
用排水路や樋門など土地改良水利施設の維持管理を行い、受益者の皆様へ適正に水を配分することが主立った業務で、また、それら水の管理に付加する効果として地域排水の除去、地下水涵養(水源転換効果)、防火用水、修景的利用・保全効果などが見込まれ、農業効果だけに留まらず地域全体に様々な恩恵をもたらしています。
しかし、都市化の進展や食生活の変化に伴い、食料生産の価値は低下、農業に対する需要や関心が薄れていきました。先人が身を削りひと鍬ひと鍬耕した豊かな、遍く人々のいのちを養ってきた多くの農地が、休耕・放棄・転用されています。また、食糧自給率も50年前と比べ30パーセント低下しています。こういった実状から、土地改良区の運営も従来のままでは成り立たなくなっていきます。
米価の下落や農機具・資材等の価格上昇、助成金などの減額、さらには担い手不足などによって農家の負担は増す一方であり、さらに、土地改良施設の高度化が進み、水門の開閉、揚水機場など、ほとんどが電動化され電気代が嵩むようになりました。それらの軽減に少しでも寄与するためにさまざまな取組を行っています。
その主要となるものが、用水路の遊休落差を活用した小水力発電事業であります。
これによって施設の維持管理費等を賄い、受益者負担の節減に努めています。
那須野ヶ原には、上流域から下流域まで480mもの落差があり、水をそのまま下流へ流すと、流速が早くなり危険なため水路には様々な工夫がされています。例えば、開水路には落差工、パイプラインは減圧水槽などが設置され落差のエネルギーを減じています。
しかし、そのようにエネルギーを漸減するのではなく、水車を設置し発電を行うことにより上手に活用しているのです。
那須野ヶ原用水は、農業用としてだけでなく地域の水道や防火用水等として利用されているため、通年通水となっています。このため、落雷や点検等に要する停止以外では常に発電が可能です。小水力発電は、温室効果ガスをほとんど排出せず、再生可能エネルギーの中ではもっとも設備利用率の高いものであり、現在、私どもの管理する施設内では総出力が1500㎾の小水力発電施設8基と、出力400㎾の太陽光発電施設が稼働しています。それによって、国営事業完了時の試算では10㌃あたり5,000円はくだらなかった維持管理経費は、国営事業が着工されてから40年以上が経過し、施設の老朽化によって維持管理費が増加傾向にある現在においても、経常賦課金、維持管理費併せて水田1,998円/10a、畑333円/10aと大幅な減額傾向へ推移しています。
クリーンエネルギーの利用推進は、受益者負担の軽減だけでなく、命の原点である水を、後世にきちんと継承するための手立てのひとつでもあります。
水というものは人々の生活と切って離せるものではありません。発電事業をはじめとした農業用水が持つ様々な多面的機能の啓発活動を行っていくことにより、人々が水とふれあう日常の須臾に、先人たちの苦労や、その功績があったからこその今の那須野ヶ原の豊かな水があるのだと感じていただければ幸いです。
今後も、水と農、そして様々な視点から地域とともに那須野が原の発展に貢献して参ります。
事業紹介
水源の森を保全し、地域資源を活用する方策として、以下の様な活動をおこなってきました。
- 平成16年度バイオマス等未活用エネルギー事業調査「那須野ヶ原の家畜糞尿・生ゴミ及び木質による広域的バイオマスエネルギー利活用調査事業」(経産省)
- 平成19年度から平成24年度「農業用水水源地域保全対策事業」(農水省)補助事業により農業用水と水源林の働きについて広報・啓発活動を実施。
- 平成20・21年度は、那須野ヶ原4万haを潤す那須野ヶ原用水の水源の森を保全するため、「1000年の森を育み、エネルギーと 食を自給する地域の環境と経済循環可能性調査事業」(内閣府)を実施し、間伐材の有効活用による木質バイオマス発電所の実現に向けた賦存量並びに地域循環システムの構築に向けた調査に取り組みました
- 平成21年度はバイオマス等未活用エネルギー調査事業(経済産業省)を導入し、事業化に向けた「那須野ヶ原モデル」の経済性・環境性の検証を行いました。